初めての大きな利益を得た喜びに浸っていた私でしたが、FX投資の世界では、成功と失敗が表裏一体であることを思い知らされるのに、そう時間はかかりませんでした。この章では、私が経験した最初の大きな損失とそこから学んだ貴重な教訓について、詳しく綴っていきたいと思います。

あの成功から約2週間後のことでした。自信を得た私は、少しずつ取引額を増やしていました。AIツールの予測精度の高さに感銘を受けていたこともあり、AIの分析結果をより重視するようになっていました。

その日、AIツールは米ドル/円の大幅な上昇を予測していました。過去の成功体験から、私はこの予測を信じ、かなり大きな金額でロングポジション(買い)を取りました。しかし、その直後に予期せぬニュースが飛び込んできました。米国の経済指標が市場予想を大きく下回ったのです。

為替市場は瞬く間に反応し、ドル/円は急落しました。私のポジションはみるみるうちに含み損を抱えていきます。「まだ反発するかもしれない」という期待から、すぐには損切りができませんでした。しかし、その後も相場は回復せず、結局大きな損失を抱えてポジションを手仕舞うことになりました。

最終的な損失額は、前回の利益の倍以上。約12万円の損失でした。

この損失を目の当たりにしたとき、私の中にはさまざまな感情が渦巻きました。ショック、後悔、自己嫌悪、そして家族に対する申し訳なさ。特に、「家族の将来のために」と始めたはずの投資で、貴重な資金を失ってしまったという事実は、私を深く落ち込ませました。

しかし、嘆いてばかりいても仕方ありません。冷静になって、この失敗から学ばなければならないと自分に言い聞かせました。そして、この経験を徹底的に分析し、以下のような教訓を導き出しました:

  1. 過信の危険性: AIの予測を過信し、自分の判断力を軽視していました。AIは強力なツールですが、完璧ではありません。AIの分析結果と自分の判断をバランス良く組み合わせることの重要性を、改めて認識しました。
  2. リスク管理の重要性: 利益に目が眩み、適切なリスク管理を怠っていました。一つの取引に賭ける金額の上限を設定するなど、より厳格なリスク管理が必要だと痛感しました。
  3. 感情のコントロール: 損失が拡大していく中で、冷静な判断ができませんでした。感情に左右されない取引の重要性を学びました。
  4. 市場の不確実性: 為替市場は予測不可能な要素が多々あることを再認識しました。どんなに準備しても、常に想定外の事態が起こり得ることを肝に銘じる必要があります。
  5. 損切りの重要性: 「まだ回復するかもしれない」という希望的観測から、適切なタイミングで損切りができませんでした。損失を最小限に抑えるための、迅速な決断力の重要性を学びました。
  6. 謙虚さの必要性: 一度の成功で慢心していた自分を反省しました。常に学ぶ姿勢を持ち、謙虚であることの大切さを再確認しました。
  7. 全体的な戦略の見直し: 一つの取引に過度に依存するのではなく、複数の通貨ペアや時間枠を活用した、より分散化されたアプローチの必要性を感じました。

この失敗後、最も難しかったのは家族への報告でした。夕食後、子供たちが寝た後で、妻に正直に状況を説明しました。「12万円の損失を出してしまったんだ」と伝えたとき、妻の表情が曇るのを見て、胸が締め付けられる思いでした。

しかし、妻の反応は私の予想を超えるものでした。しばらくの沈黙の後、彼女はこう言いました。「確かにショックだわ。でも、あなたはきっとこの経験から多くのことを学んだはずよ。これを糧にして、もっと賢明な投資ができるようになるんじゃないかしら」

妻のこの言葉に、私は深い感謝の念と共に、大きな励みを感じました。同時に、家族の信頼を裏切らないよう、より慎重かつ賢明に投資に取り組まなければならないという決意を新たにしました。

子供たちには、具体的な金額は伝えませんでしたが、「パパの新しいお仕事、今回はうまくいかなかったんだ。でも、そこから大切なことを学んだから、これからもっと頑張るよ」と説明しました。子供たちは少し残念そうでしたが、「パパ、次は絶対成功するよ!」と励ましてくれました。

この経験を経て、私のFX投資に対するアプローチは大きく変わりました:

  1. リスク管理の強化: 一回の取引での最大損失額を厳格に設定し、それを絶対に守るようにしました。
  2. 分散投資の実践: 複数の通貨ペアを組み合わせ、リスクを分散させる戦略を採用しました。
  3. AIと人間の判断のバランス: AIの分析結果を参考にしつつも、最終的な判断は自分自身で下すようにしました。また、市場のファンダメンタルズにも十分注意を払うようになりました。
  4. 感情管理の徹底: 取引前に必ず深呼吸を行い、冷静な状態で判断するよう心がけました。また、定期的に瞑想を行い、感情のコントロール力を高める努力を始めました。
  5. 学習の継続: この失敗を機に、より高度な投資理論や心理学についても学び始めました。
  6. 記録と反省の習慣化: 毎回の取引後、詳細な記録をつけ、定期的に振り返りを行うようにしました。

この大きな損失は、私のFX投資の旅において、非常に重要な転換点となりました。確かに金銭的な痛手は大きかったですが、そこから得た教訓は、その損失額をはるかに上回る価値があったと信じています。

失敗は成功の母と言いますが、まさにその通りだと実感しました。この経験があったからこそ、より慎重で賢明な投資家になる第一歩を踏み出すことができたのだと思います。